2013年7月6日土曜日

留学ではない選択〜そもそも『留学』ってなんだろう?〜 前編

2FSP参加者 岩田


※まず先に、タイトルを見て関係者の皆様をはじめ様々な人から、お怒りのお問い合わせが来たら… 大変(ヤバい)ですから補足しておきます。決して留学を否定するわけではありませんし、自分自身としても日本の中に閉じこもるより『留学』に行って、いろいろと経験するのは大賛成です。


 他のみなさんは、FSP[First Step Program]を終えて留学に行ったことや行く予定などを経験として語ってくれているので、あえて、そこにはまだ向かってない自分の経験談を書かせてもらおうと思います。




 第2回のFSPに参加し、2012年の夏休みにフィンランドに行ってきました。そこでは、多くのことを学び、交流を深め、様々な価値観を得ることができ、最高の『海外経験』だったと思います(詳細は若干、下で紹介します)



 そして帰国後すぐに、所属する法学部の「ムート[Moot]ゼミ」に挑戦することになりました。多くの人がMootゼミ」って、なんっすか?と思うかもしれません。
 簡単に言うならば、ある国境をまたぐ物の取引で発生した揉め事を解決するために、「仲裁」という解決手段によって、裁判の弁護士のように依頼人の弁論をするゼミです。



 ふんっ、な~んだ、弁論大会みたいなものかぁ~と、思われたかもしれません。しかし、その先が重要な所です。このMootは、Vis Moot/Vis Moot Eastという名称で、世界中の大学生・院生が集う世界大会が開催され、そこで競い合います。徐々に見当がつき始めたかもしれませんが、全世界の学生が競うには、言語の問題が生じるわけで大会での公用語はすべて英語になります



 えっ?でも、英語弁論大会だって英語だし、高校生や中学生でもやってんじゃん()という人がいるでしょうね…。「その通りです」なんて、問屋がおろしませんよ()。さっき揉め事を解決するとも、「仲裁」という解決手段とも言いました。つまりは、英語の日常会話どころか、わかりやすく!?言えば、法律の専門用語もすべて英語で理解し、英語で説明・弁論し、仲裁人というジャッジメントの質問にも、もちろん英語で的確かつ論理的に回答することが求められます。



 …な、なんかすごいみたいだな。でも、結局は単語力と会話能力があればいいわけで、帰国子女とかなら簡単っしょ!! 下手に張り合ってもねぇ…というツワモノもいるかもしれませんね。ただ、そう簡単でもありません。よくニュースを見ていると、あるいは高校の歴史や政経・倫理科目で聞く言葉に、「自由主義」や「社会主義」という言葉がありますよね。そういった感じで法律の世界にも、「英米法(主義/規範)」と「大陸法(主義/規範)」という2つの大きな思想の対立軸が存在します。Mootで扱うのは、国境をまたぐ揉め事です。つまり、そこで適用する国際的なルールは、上記のどちらか一方を採用するわけにもいきませんから、Case by Caseで2つの思想がごちゃ混ぜになるんです。だから弁論をするには、ルールとか言語とかの問題以前に、2つの思想による価値観や弁論方法の違いなどもしっかりと理解・習得することが求められます。



…うわぁ~、絶対ムリなヤツやんけ、よくできるな、つうか物好き??…(苦笑)という意見があれば、ごもっともですし、自分も一応大会には参加できましたが、上記すべてを出来たかと言われれば、50%出来ていればマシな方だったと思います…(本当はもっと出来れば良かったんですが)。でも、FSPの経験があったからこそ、最後まで頑張れたと思います。




 つまり、このMootにもFSPにも必ずしも長期ではないですが、『海外経験』のすべてが、そして『留学』の一通りの要素が、組み込まれている気がします。
ご覧のとおりMootにおいては、英語能力はあくまでも「ツール」として(使えることを前提に)専門的な深い議論・弁論「コアなレベルでの異文化交流」を行い、その過程で異なる思想の価値観や性格をも理解「異文化理解」することになります。
これはとても凄いことですが、普通に考えれば、自分のような帰国子女でもない普通の日本人学生にとっては、雲の上のまた上の話のようです。

 でも、言い方は悪くなりますが、たった2週間FSPに積極的・自主的に参加していくだけで、このような夢物語が現実化できるんです。




 実際Mootにおいては、1週間から2週間前後かけて弁論するわけですが、あくまで日中だけです。日が暮れれば、夕食会や晩さん会といったレセプションやパーティーが開催され、夜が更けてくれば、BARやディスコ・ナイトクラブでのパーティーも毎晩のように開催されます。そして、日によってはお昼にも、会食会としてバンケットがセッティングされ、最終日の閉会式は、それはもう大変なことになります()

 世界各地から集まった学生が、英語で意思疎通し、かつ中身の濃い議論や会話を繰り広げ、英語の名曲で盛り上がってダンスを踊り、帰国後も連絡を取り合う仲が生まれるのが、FSPの後の最初の『海外経験』としてのMootゼミでした。

 こういうのもあれですが、ハーバードやイェール、NUS、ケンブリッジ、オックスフォードなどなど世界の名だたる優秀な学生相手に、もちろん英語で、中身の深い話をしなければならないんです(←受身的な表現でごめんなさい)。自分も弁論の議題に「児童労働の問題」があり、その点について、日本の労働市場の現状とか考え方とか、知る限りのことを一生懸命伝えました。
もし、FSPでの『体験』がなければ怖気づいて、『Ah~』、『Uh~』、『Mm~』という情けない結果になっていたでしょう。

でも、そうではなくて、自分の方から積極的に相手の説明を聞き、疑問点を質問出来て、有意義な期間を過ごせたのは、FSPあってのことでした

そしてそこでは、普通に留学したのでは、ただ単にすれ違う程度の関係で終わるだろう世界中の学生たちと、真剣に1つの議題に関して自分の意見を話せたのは、留学以上の経験で、変わった形の『留学』をしてこられたと思います。






そこで考えたのは、海外経験や国際交流としての『留学』の形って、なんだろうということでした…。だから、次の『海外経験』としての『留学』も普通の形にとらわれないものがいいかなぁ~思っているところで、そのための準備に勤しんでいる!?のが、近況ですかね…。




後編につづく
(海外経験・国際交流ってなんだろう?)